《MUMEI》
母からの伝言
自分にオペ後の自覚が無いため、暴れだす可能性があるというので、翌日から母は縛られていた。
「眼球は変だけど、息してるし、誰が見舞いに来てるかわかってるから、後遺症も平気みたいね」
「予断はゆるさないみたいだけど。」
香美の安心な台詞に、美香が取り払う台詞を投げる。私は仕事があるので、午前だけにしてもらい、切り上げて病院へ向かう。母も心配だが今の大事な家庭が食べていけないほうがきついと判断したからだ。二人の妹は専業主婦なので、理解は出来ないだろう。旦那様の稼ぎさえよければ仕事なんてしないで専業主婦をしてるだろう、私だって。 〈やはり、それは無理無理、子供と一日顔合わせるのは勘弁〉
毎日三人で時間帯を考え見舞いに交代で来ていた。旦那様群も嫁さん群の迎えに顔をだしてくれた、小さな実もわんさか花をさかせにやってきた、病院なので賑やかにならないよう、時間差攻撃で。母は相変わらずで、これなら大丈夫だと、誰しも思っていた。何故なら、起き上がろうとするし、話し掛けるし、話題もきちんと理解できていたから。ただ、医師の話では、オペした以外にも破裂しそうな血管があるそうらしいのだ。いくつも。
ある朝、自宅で旦那を仕事に出し、娘を起こし、保育園の支度をしていたら、玄関をノックする音に気付いた、ピンポンがあるのに、朝早くノックなんて、誰だろう、それも、大きなハンマーで殴るくらいの大げさなノック。同時に、家の電話がなる。2つ同時なんて最悪だし、私には無理。電話は娘がとった。玄関には誰もいない‥電話は美香から。夜中の電話と早朝の電話は、いい電話ではないことくらい、想像がつく。またしても、私の膝がグラグラしてきた
オカアサン キトク シンジャウヨ ジカンノモンダイ ダッテ イマ ビョウイン カラ デンワ マスミ ドウシヨウ ドウシヨウ ドウシヨウ
私の脳は冷静だった。  「益美、あたしがもし、死んだら、孫たちはあたしの事は忘れちゃうよね、いつか、忘れちゃうよね」
母が酒のみながら、言ってた言葉が蘇る。あれは、忘れないで欲しい気持ちなんだと今理解した、そして、玄関のピンポン押さないでノックしたのも、母だと思った。  アタシハ ココダヨ ビョウイン ヌケダシタヨ マサカ カンジャノ タチバニ ナルナンテ マッピラゴメン サイゴニ マゴニ アイタクテサア マスミニ アイタクテサア 。

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