《MUMEI》
片付けは発見のもと
妹らは、チビ等を旦那様の親に預けて集まってきた。女って、だめね。少し片付けては、目に入ったものに興味があると、見入ってしまう癖。三人とも同じだから、なかなかはかどらない。
「なにこれ?」
孫それぞれに、郵便貯金がしてある通帳と、大学ノート数冊と、日記帳。
通帳には毎月少しずつ入金してあった。ありがたい母だ。何に使おうかと、よこしまな考えが浮かぶ。私だけだろうかャャ
大学ノートには、日々の仕事内容が記してあるものだった。汚い字なので読めたもんじゃない。しっかり読み取れたのは、患者の名字と入退院と、仕方ないが亡くなった記しだ。毎日書いてあった。ほんの、数行だけれども。
日記帳は見た目でも日記帳とわかるものだったので、見れなかった。見てはいけないと思った。実は私も中学から毎日のように日記をつけているからである、日記とは、自分をさらけだせる場所であるから、自分と向かい合えるし、喜怒哀楽を出し切れる魔法の書き物だから。母の日記はみれない、それが三人で決めた答えだった。こんなことなら、棺に入れてあげれば良かった。
「でも、興味ある、みたいなぁ、みたいよ、私」
生真面目な香美が言った。続いて美香も、見つけたのにとつぶやいた。 さっきまでの見ないという決定項目は何の意味が無い。私は見たくなかった。三人同じように育ってきたので、罪も同じに背負うってことで決定。また、覆してくれないかと願うが、それは無念。三人同じに育てたが三人違う性格。それも仕方ない。で、あっちむいてホイで読む順番をきめた。何だか、いやな順番になったよ、年寄り順。私が一番。  助手席にシートベルトまでして、大事に日記帳を持ち帰った。

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