《MUMEI》
出会いから妊娠
さて、困った日記帳。悩んで一週間が経つ。二人からはまだかと催促のメールがビシバシはいるし。覚悟を決めるか益美!
母のあの香が蘇る。声が耳の奥から響いてくる。
〇月×日
 祐希さんを好きになったみたい、お見合いしてよかった。仲人は祐希さんの先輩に頼もうかしら。彼は、私を幸せにって言ってくれたし。これから楽しみね。
その頃の母は、かわいらしい少女のようだった。後に私の父となる人と見合いで結ばれたらしい。初耳だ。当時は見合いが主流だったのは知っていたが。ここからは、結婚式までのうれしい楽しいだけの文ばかりの日記になっている。式が近づき不安定になってきた私と違い、母は薔薇色でブルーではない様子がうかがえる。きっと、この日記は、父との出会いの頃からつけはじめたのだろう。かわいい母だ。
〇月×日
式を終えた。祐希さんはおつきあいの間私には触れもしなかった。手くらいむすんでもかまわないのに。今夜は、初夜になる。私はどうしたらいいのだろうか、彼に任せればいいのだろうか。でめ、式当日の夜なのに、私はホテルで一人きり。祐希さんは友達と、飲みに行ってしまった。淋しいなぁ。花嫁一人なんて。あっ?帰ってきたみたい。

最後の文字はあわてたのか、殴り書きになっていた。初夜ぁ、母も女だって、今日記を読んで知った。私にとって、母は母でしかない存在なのに、女だという事実はわかってるようでわからないふりをしていただけだ。初夜で父と結ばれたら、赤ちゃんが出来る。わからないことでは無かったが、わかりたくもないことだ。でも、改めて私は女の母を知ることになる。
〇月×日
毎晩、祐希さんに抱いてもらえる。生理も遅れているので妊娠でもしたのだろうか?それでも、毎晩抱いてくれる。お酒は晩酌だけではすまないらしく、また友人と出かけて、酒の勢いで毎晩抱いてくれる。酒臭くてイヤだけど、美喜が好きだと抱いてくれる。私は、祐希さんしか知らないからうれしい。
 父と母は毎日のようにセックスをしている模様。私の頭の中はぐちゃぐちゃだよ。あの父と母が抱き合うねー、想像すらしたくないがそれが事実らしい。
〇月×日
妊娠したけど、だめだった。赤ちゃん流産してしまった。赤ちゃん出来たから、セックスしたくないと言ったら、祐希さんに突き飛ばされてしまいました。それが原因で赤ちゃん死んじゃった。あんな力で突き飛ばすから。でも、何も言えません。私は妻だから。祐希さんは私の大事な夫だから。 ゴメンネ
  ゴメンネ ワタシノ アカチャン
そうだったんだ、この頃から暴力があったんだ、今でいうならDV、かな。 私の上に兄か姉がいたんだ。そうだったんだ。母の日記でまた真実を知ることになった。 益美は二番目の子だったんだ………

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