《MUMEI》

私は『シューズクラブ』の前に立っていた俊彦の胸に飛込んだ。


俊彦は、ものすごく驚いていた。


私が商店街で俊彦に抱きつくなんて、普段は考えられなかったから。


しかし、今日は特別だった。


「何? そんなに俺に会いたかったの?」


「うん!」


普段は真っ赤になってうつめく私が顔を上げて笑顔で答えたから、俊彦は更に驚いた。


「あのね、父さんからすごくいい物もらったの!」


「ふ〜ん」


俊彦のテンションが一気に下がった。


「絶対俊彦も喜ぶ物!」


「じゃあ、中で鑑定するよ」


俊彦はスタスタと裏口に行き、電気をつけながら、階段を上がっていく。


「…見せて」


部屋に入った俊彦は、ベッドに座った。


「あのね、これ!」


私はバックから小さな箱を取り出した。


「貴金属嫌いじゃ無かったっけ?」


「違うわよ!」


私は俊彦の隣に座り、箱からケースを出し、開けて中を見せた。


「何これ?」


「よく見て!」


私は俊彦に、中身を手渡した。


俊彦が、中身を見つめる。

「これ…」


「わかった?」


私は、頷く俊彦から『それ』を受け取った。

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