《MUMEI》

『俺は、これで。』




ももたは不機嫌そうに、うつむきながら、自分の部屋へと帰っていった…。




『ももたくんって…なんか思ってたイメージと違ったなぁ〜。』




何も知らない吉沢さんは、ボソッと呟いた…。




『お粥作ったら帰るから。…あがっていいかな?』




『…うん。』




ぎこちない手つきでキッチンに立つ吉沢さんを見ていたら、無性に…
抱きつきたくなった…。
そして全てを話して謝りたかった…。
でも結局ズルい自分は変えられず、言えずじまい…。




『今日はありがとう…。』




本当にお粥だけ作ってもらって、吉沢さんを帰してしまった…。




翌日…
私は、どうしても昨日のももたが気になって、しょうがなかった…。




ストーカーのように壁に耳を張り付けジッと、ももたの部屋の玄関が開くのを待った…。




偶然を装って話し掛ける…それしか出来ない!!




しばらくすると、ももたの部屋の玄関が開いた。




『今だ!!』




ブーツを履くのに、手間取りながら急いで外へ出た。




ゴンッ!!
『痛ったぁ〜!!』




私が勢い良くドアを開けたせいで、ももたの頭をぶつけてしまったらしい…。




『あっ…ゴメン大丈夫?』




『いたたた…
全然大丈夫ちゃうわボケ!何を朝っぱらから勢いつけて飛び出してんねんっ!』




『だって〜まさか、ももたが家の前にいると思わないじゃん!何してたの!?』




『何してたって…
なんもしてへんわ!ただ…これを…この回覧板を渡しにきてん。』




『…あっありがと。』




『あと、回覧板に書いてある町内会の祭り…お前の分も参加に“○”しといたったからな!!』




『うん…。ありがと。
……って。…お祭り!?
何で勝手に参加…って?
ヤダよ…!私、参加したことないし!』




『お〜俺も初参加や!
なんや奇遇やな〜(笑)!』




『はぁ……。ももたは、引っ越してきたばっかなんだから当然でしょ?
ここの町内会のお祭りなんて聞いたこともないよ。
きっと…小さくてつまんないって!やめよっ?』




『あほ!参加することに意義がある。町内のみなさんと仲良くなるチャンスや。それに(笑)!
なんか手伝ったら、俺の店の物も露店で売らせてくれるかもしれへんし!
店の宣伝も出来て、一石二鳥や!絶対やるで!!
ええな?強制参加やで!』




『それが目的か…。
動機が不純すぎるよ!!』




『いやいや…動機なんか何でもええねんっ!
ちゃんと回覧板見てみ!
“若者集まれ!”って書いてあるやろ?
集まったらええやんけ!』




ももたの迫力に負けて、来月の祭りに参加することになった…。




“…ももた。…普通だったなぁ。…良かった。”




昨日はスゴく怒ってたけど…。何だったんだろう?
気になるけど聞けない。




“でも…せっかく、
いつも通り、何もなかったみたいに話せるんだもん。それでいいや!”




早速、町会長から直々の手紙が届いた。




━━━━━━━━━━━━前略…百瀬様
この度は、五十嵐様とお二人で、祭りの実行委員に立候補して頂き、誠に有り難うございます。
つきましては下記の通り、“実行会議”を行いますので、必ずご参加下さい。
場所…町会事務所
日時…日曜日・午後6時
※ 祭りの当日まで、会議は、毎週行いますので宜しくお願い申し上げます。
━━━━━━━━━━━━




『…………ん?
…じっ……実行委員!?』

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫