《MUMEI》

「結婚式は?」


「すぐやれば大丈夫!」


(無理じゃない?)


夏樹さんは奇跡的にすぐに挙式できたが、普通は、半年か一年は準備期間が必要だった。


「だからさ…」


「ま、待って!その前に、プレゼント交換しない?」

私は慌てて提案した。


「あ、忘れてた」


俊彦は、机の引き出しを開けてプレゼントを取り出した。


「可愛い」


「作ってみました」


俊彦は、得意気に言って、ビーズのブレスレットを私にはめた。


「これで、孝太のはしなくて済むよね」


(まだこだわってたんだ)


私は苦笑しながら、『ありがとう』と言った。


「で、蝶子の何? 結構大きくない?」


「あ、あのね」


私はガサガサと袋を開けて俊彦に中身を見せた。


「バスローブ?」


「だって…いつも裸、だから」


俊彦は、風呂上がりも寝る時も、基本的に裸で私は目のやり場に困っていた。


「あのね、私のもあるから…」


私が買った時は、在庫が無かったから、私は愛理さんに『俊彦と同じ物』を頼んでいた。


私は、自分の分のバスローブを広げた。


「あ…れ?」


「それ着てくれるんだ〜」

俊彦がニヤリと笑った。

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