《MUMEI》

◆◇◆

 夜桜はあの妖を探していた。

 文机の下や帳の裏を見てみたのだが、黒手毬は見つからない。

(一体‥何処に‥)

 暗い中では、あの黒い妖を見つけ出す事は難しい。

 だがあの小さな妖は、どこかにはまり込んで出られなくなっていないとも限らない。

 姫君が不安に襲われかけた、刹那。

「‥‥‥‥‥?」

 ぼう、と辺りが明るくなる。

「狐叉‥?」

 ゆらゆらと浮かぶそれは間違いなく、七尾の焔だった。

◆◇◆

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