《MUMEI》 二十二夜 仮初を思ふに◆◇◆ 「どうかしたのか」 「狐叉‥」 側に寄って来た七尾に、姫君は薄ら寂しげな笑みを浮かべた。 天は厚い雲に閉ざされたまま。 月は見えない。 静寂に呑まれてしまいそうだ、と夜桜は思う。 「本当に‥大丈夫か」 狐叉が戻って来てから五日が経とうとしている。 だが、未だ彼女が帰る気配はない。 それが彼女にとって喜ばしい事に変わりはなかった。 だが心苦しくもある。 「‥‥‥‥‥‥‥」 夜桜は狐叉を抱き上げ、庭へ出た。 ◆◇◆ 前へ |次へ |
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