《MUMEI》
2勝6敗
「着替えるか。」


「はい。」


更衣室へ戻ろうとした時だった。


「黒田くん。」


「?」


あの女監督だ。
なに?


「なんでしょ?」


「今日はありがと。」


「あ、いえいえこちらこそ。」


「いい選手が揃ってるわね。」


「いや、まだまだですよ。」


「何か気になったことある?」


「西条の選手でってことすか?」


「そう。何かあったら教えてほしいの。」


「…う〜ん」


(学生のコーチじゃ言いずらいかもな…)


「両サイドが速攻に行かなかったのは、体力温存か何かですか?」


「そう。人数が少ない上に君たちの両サイドの戻りが早かったから。」


「だったら体力強化してでもやらせるべきですね。」


(…意外にズバッと言ってくるのね。)


「できるできないじゃなくて、やるやらないが重要なんじゃないすか?」


「え?」


「監督が速攻走らせないってことは、攻撃意欲を抑えるってことになるんすよ。サイドプレイヤーの自分の意見としてはね。」


(なるほど…、現役選手だからこそ選手視点で考えられる、そこにこの子たちの強さがあるのか…)

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