《MUMEI》
事件だ!?
夏海が目を覚ましたあとに、タオルケットを足で蹴飛ばす、由佳。
「おばさん、いないみたいだけど、買い物かなぁ?」「そうかもね、仲見世商店街に、行くとか、そういえば言ってたよ」
「歯ぎしりしてるよ、こいつ、将来彼氏ができたら、どうすんのかなぁ、千明。彼氏は出来ないかもね、性格悪いから」
夏海の話に、由佳はおどけて笑う。〈かわいいなあ、由佳の笑顔、うらやまし〉夏海の心がつぶやく。  「夏海も寝言で歌うたったことあるじゃん、その方が、怖いよ!」
去年の学校のキャンプファイアで、もちろん、一泊の。その時に同じ部屋に寝ていた、美咲が、寝言で歌う夏海を目撃したのだ。目撃だけならいいのだか、まぁ、人間拡声器の美咲はあっと言うまに、女子男子にも広めてしまい、まあ、はずかしかった。
「 これは、立派ないじめだ!」
と、確か美咲に抗議をした。  思い出したくないのに、由佳の奴。心で泣きそうになる、顔は笑ってるが。
「ゆかぁ、セミ取り、行こうよ、あぶらぜみとくまぜみ、どちらが、沢山とれるか、理科の宿題にしたんだ、って、今決めたんだけどね。」
まだ、歯ぎしりしている、千明をおいて、網と虫かご持って、うるさい、セミのパーティーの中に向かった。
歩いて5分か10分か、たどり着いたパーティー会場。さっそく、二人で網をふりまわす。網をかぶせると、必ずおしっこをかけられる、上をむいてるから、顔面に必ずかかる。泣き叫ぶのは、確か雄だったなぁ、羽をばたつかせるのは雌だったなあ。  とにかく、夢中になった。宿題のためだ。  雲の流れがあやしくなったことも気付かなかった。入道雲に誘われて、いきなり雷とたくさんの雨が降ってきた。それでも、泣き止まないセミ。それでも、セミ取りをやめない、夏海と由佳。セミも二人もビショビショだ。

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