《MUMEI》
拓海視点
「――あれ?…惇は…」
潮崎は俺に向かい尋ねてくる。
「――出てったけど?」
「は…、…、出てった?」
肩に下げていたバスタオルを外し、じっと俺を見る潮崎。
惇が居た時とは別人な位怖い顔をしている。
「…俺が追い出したんじゃないから、自分の意思で男に着いて行ったよ」
テーブルの上にあった惇の煙草に手を伸ばす。
俺は一本抜き取りライターで火をつけた。
「…男って…」
「潮崎さんって惇のセフレなんだって?スッゲーな惇の奴、名古屋に居たときも派手だったけど今は芸能人とね、つか本人も芸能人か、まー潮崎さんと違って全然売れてないけど…」
灰皿に灰を落とす。
――空気が酷く張りつめだした
…楽し。
「――惇は何処に行った…、拓海さん…惇に何言ったんだ…」
俺の正面まで近ずきしゃがみこみ俺に視線を合わせてくる。
しかしこんなイイ男今まで見たことがない。
睨みつける眼差しが俺だけに向けられていると思っただけで躰の奥がふつふつと熱くなってきた。
「ふっ」
煙草の煙をわざとらしく潮崎の顔に吹きかける。
それでも潮崎は眉一つ動かさず黙ったまま俺の言葉を待っている。
「――だから、男が迎えに来たんだよ、
茶髪の外人みたいな奴とさ、俺の眼の前で抱き合ってキスして腰まで振って着いてったよ」
バンッ!!
「分かった…」
潮崎はテーブルを強く叩きつけた。
そして俺から視線を外し潮崎は立ち上がる。
ソファにかけておいたジャケットをはおった。
「へ〜、相手しってんだ?あ!もしかしてこれから3P?」
潮崎は靴を履きドアノブへと手をかける。
「――兄弟全然似てね、…惇はそんな黒い腹ーしてねーし…」
「バカか…、惇にどんな話聞いたかしんねーけどな…、惇はね…、」
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