《MUMEI》
モヤモヤ
   〜麗羅視点〜


私は、無意識に歩の手を振り払っていた。


「中原くん大丈夫!?」


歩と一緒に居た女の子が歩に駆け寄る。


歩の手を払ってしまった罪悪感も、一瞬で黒いモヤモヤした気持ちに変わっていく。


その女の子は、心配そうに歩の手に触れる。


「大丈夫だよ。小湊さん」


歩は寂しそうな笑顔を浮かべ、その女の子――小湊から手を離した。


そんな笑顔が見たい訳じゃないのに・・・。


「れい「真星行こっ!」


歩の声を遮って真星の腕をつかんで歩き出す。


歩は、もう何も言わなかった。


「中原くん・・・」


後ろで小湊が歩に話しかける声が聞こえる。


自分が拒絶したのに、歩が今朝のように引き止めてくれないことを悲しいと思うなんて・・・


歩の傷付いた顔なんて見たくないのに・・・・・傷つけているのは私。


矛盾した想いが胸の中で交差する。

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