《MUMEI》 キス 〈私〉「キスすれば、戻れるかもしれないわよ?」 ななななな、何言ってるの!!? 香織さん、冗談もほどほどに―… 私が口をぱくぱくさせていると、 「キス??―…って、あのキス?」 椎名くんが訝しげな顔で香織さんに問いかけた。 「あのキスって??」 香織さんが訊き返す。 「…えーと―…チュー、のことだよな??」 椎名くんが訊きなおす。 「…当たり前じゃない、他に何があるのよ」 「…いや、いろいろ、魚とか、ほら……」 言いながら、椎名くんの顔が赤くなっていくのが分かった。 「あなたたちねえ…そんな、中学生じゃないんだから、キスぐらい―…」 そう言って私たちの顔を交互に見比べた香織さんは、はっとしたような表情になった。 「…したこと、ないの??」 「…………」 「…うそ、本当に??」 私は、黙って頷く。 椎名くんは、顔を背けた。 「2人とも、可愛い〜!!…いまどき、いるのね〜」 そう言って、香織さんはくすくすと笑った。 ―…嘘、ファーストキスがまだって、そんなに珍しいことなの!? 「じゃあ、ほら、いい記念じゃない! …キスって、神秘的な力がありそうじゃない??試してみる価値アリよ!!」 香織さんが続ける。 「…キ、キスは!! ―…本当に好きな人としかしないって決めてるの!!」 思わず、言ってしまった。 前へ |次へ |
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