《MUMEI》

「まだー?」

光はショートブーツで歩き難そうだ。

「手、貸してやるから。」

雪が深いので開拓していくしかない。

「俺はー?」

幹祐がもう片手を引っ張る。

「地元民はもう少し頑張れ……!」

公園までもう少しだろう。
誰にも気付かないようにと埋めた櫛……。

半分は秘密基地にしていた山に埋めた。
その山は売られて少しだけ開拓されていた、もう入れない。

「この辺かな。」

でかいだけが取り柄の公園だ。

「子供いないねー。」

光の言う通りだ。
それどころか人もまともに見られない。

「今時、家の中の方が楽しいからなー。」

幹祐の言葉に同感だ。

「国雄、火ィある?」

光が線香を取り出した。
ポケットからジッポーで点火する。

雪上に突き刺した線香から煙が細く風に乗って流れ出す。

俺達はそれを眺めながら黙祷した。




やっと、レイと正面を向いて話せた気がした。

何か、伝えられればいいと思ってたけど今更だ。

前みたいにお前の傍でぼけーっと、させてくれ。

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