《MUMEI》

「…そうね。ようちゃんはそういうトコ真面目な子だったわね」



香織さんは微笑むと、椅子の背もたれに寄りかかった。



「…変なこと言っちゃってごめんなさいね」


「…そんな、謝らなくても―…」


「―…で、椎名くんもないの!?…キスしたこと」



…そうだ。
香織さんが反省なんてするはずなかった。



「…そ、んなの、知らねえヤツとできっかよ…」



真っ赤な顔で俯く椎名くん。



「…じゃあ、知ってる人ならいいのね??
―…純潔でキレイな男の子って、ますますイイわ〜!!」


「…は…??」



椎名くんのはてながマックスになる前に、私は話題を変えた。



「あ!!そうだ、おにぎり作ってきたんだけど、食べない!?」



自分の分以外に、椎名くんに渡そうと思って作ったおにぎり。


…電車では、恥ずかしくて渡せなかった。


―…今、こうでもしなきゃ、椎名くんが香織さんに襲われちゃう!!

…えっと、冗談抜きで。



「マジで??食う!!」



椎名くんがにこにこしながら答える。



「美味しくないかもしれないけど―…」



そう言って、私は持ってきた鞄からおにぎりを取り出した。



「香織さんも食べる??」



私が訊くと、



「あー…あたしは遠慮しとくわ」



香織さんは、そう言ってにっこり笑った。



…ちなみに香織さんは、私のクッキー経験者だ。



「おれも弁当作ってきたからさ、一緒に食おうぜ!!」



そう言って、椎名くんもお弁当を取り出す。



昼食の時間が始まった。

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