《MUMEI》

おれが、作ってきた弁当を出すと、



「…やっぱり、出直して―…」



蓬田が、そのおにぎり(?)をしまおうとした。


…苦手なのに頑張って作ったもんを無駄にできっかよ、


おれは手を伸ばして一つを手に取った。



「いただきます」


「―あ、まずいって―…」



蓬田を無視して一口かじる。



「………」



…フツーにうめえ。



横を見ると、泣きそうな顔で俯く蓬田。



…あ、無言だからいけねえのか。


正直な感想を言う。



「…うまいよ」



蓬田が顔を上げた。



「…形は―…アレだけどさ、味はいいよ」



そう言うと、半泣きだった蓬田の(おれの)顔に、笑顔が広がった。



―…表情いきなり変わりすぎ。



でも、蓬田の笑顔が嬉しくて、
くすぐったいような気分になった。



―…おれの姿してるはずなのにな。


笑顔になるとなぜか―…



…なぜか、ちゃんと『蓬田』の顔になる気がすんだよな。

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