《MUMEI》

「それは…」


「それは?」


私は俊彦の言葉を待った。

「実は、俺もよくわからないんだよね〜!

ただ、皆が『いい』って言うから、楽しみなんだ」


「へ?」


意外な答えに、私は唖然とした。


「俺は、毎回避妊してるから」


(なるほど)


胸を張る俊彦を見て、私は納得した。


「まぁ、でも。毎回愛は同じ位込めてるからね」


そう言って、俊彦は自分のネックレスに通されている指輪に口付けをした。


「やっと、これが飾れるんだね。…長かったなぁ。

でも、交換は、当日までとっておこうか?」


「う、うん」


私は、赤くなりながら頷いた。


「届は、どうする?」


俊彦が、優しく頬に触れてきた。


「いつでもいいよ…」


私はそっと目を閉じる。


俊彦と私の唇が重なる。


それは、クリスマスイブの二人だけの誓いのキスだった。


そして、体も重ね合った翌日。


十二月二十五日。


クリスマスに、私と俊彦は婚姻届を提出した。


「これで、蝶子は『村居蝶子』だね」


白い息を吐きながら、俊彦は嬉しそうに言った。


私は、言葉にならない喜びを、俊彦の腕にしがみついてあらわした

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