《MUMEI》

◆◇◆

「‥夜桜‥?」

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 何もしてやれない自分が、もどかしくてならない。

 手を差し延べて立ち上がらせる事しか、優しく抱き締めてやる事しか出来ない。

 それが、苦しい。

 自分を見つめる月色の眼が、光を失いかけている。

 それなのに。

「‥‥‥‥‥っ‥」

 悔しい。

 代われるものなら、いっそ‥。

 白い妖を抱き締め、夜桜はその毛並みに顔を埋(うず)めた。

◆◇◆

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