《MUMEI》 新婚生活「とうとう兄さんも折れちゃったのね」 俊彦と一緒に工藤家に戻り、説明すると、咲子さんはそう言って笑った。 「式場とかはこれから?」 私達は頷いた。 第一希望としては、皆が行っているホテルを考えているが、予約はやはりすぐにとはいかなかった。 「咲子さんの力で何とかならないですかね?」 多分、咲子さんは商店街の中でも一番顔が広い。 その人脈を期待して、俊彦は頭を下げた。 「…考えておくわ」 「えぇと、あと、蝶子の事なんですけど」 「もう一緒に住むつもり?」 「う…」 咲子さんの言葉に俊彦は一瞬ひるんだが、『そうです、もう夫婦ですから』ときっぱり言った。 「蝶子ちゃんはどうしたいの?」 「…一応、父さん達に訊いてからにしたいです」 「まぁ、それが普通よね」 (それに…) 結婚の許可が下りて、嬉しくて届を出してしまった事も、私はまだ父に報告していなかった。 それは、携帯ではなく、直接会って伝えたかった。 「じゃあ、今から訊いてくるから、蝶子に休みを下さい」 「兄さん今日は仕事よ」 父の仕事納めは三日後だった。 「三日も待てません!」 前へ |次へ |
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