《MUMEI》

「お疲れさま」


ティータイム後の片付けと清掃を終えた私は、咲子さんに頭を下げて『クローバー』を出て、『シューズクラブ』に向かった。


(大掃除、終わったかな?)

今日は午後から大掃除をやると聞いていた私は、店内を覗いた。


「うわ…」


『シューズクラブ』の店内は、掃除のプロが行ったのではないかというくらい、輝きを放っていた。


「蝶子、おかえり!」


「た、ただいま」


私は抱きついてくる俊彦を反射的に避けた。


「おかえり、蝶子義姉さん」


「や、やめてよ。雅彦…今まで通りでいいよ」


「そう?」


(絶対面白がってる…)


私は同い年の『義弟』になった雅彦を睨みつけた。


ちなみに、私達が結婚した事は、俊彦がすぐに一斉メールを送信したので、商店街の皆に知れわたっていた。


「『ただいま』に『おかえり』か…」


しみじみとした口調で、孝太が呟いた。


「羨ましいのか? お前もすれば?」


「麗子に言え」


俊彦の言葉に、孝太はすねたように言った。


(孝太はしたいのかな?)


私がまじまじと孝太を見つめると、孝太は『帰る』と言って『シューズクラブ』を後にした。

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