《MUMEI》
二十三夜 あらまほしけれど
◆◇◆

 月の宵。

 瞼をとじている狐叉の背を撫でてやりつつ、夜桜はある事を思い出した。

「月裔は最近見掛けないが‥どうかしたのか」

 その問いに、彩貴は口を濁した。

「いや、あいつは‥」

「‥‥‥?」

 何かあったのだろうか。

 問い質す訳にも行かず、夜桜は只白銀の景色を眺めていた。

(何だ‥?)

 雪を踏み締め、こちらへ向かって来る足音がする。

 その刹那、狐叉の耳が、ぴくり、と動いた。

◆◇◆

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