《MUMEI》

(それは、疑いすぎだと思う…)


その証拠に、夫の冬樹さんは全く動揺していなかった。


「帰るぞ、蝶子」


「あ…うん」


帰り道で、俊彦は真剣な顔で呟いていた。


「夏姉の子供と同級生になるくらいなら、子作り遅らせようかな」


ーと。


それからの『外泊』中も、私達は皆から冷やかされたが、俊彦は喜ぶばかりだった。


そして、『外泊』最後の日に、私達は改めて俊彦の両親ー村居のおじさんとおばさんに挨拶に行った。


場所は、俊彦の両親が暮らす家。


同じ町内でも商店街からかなり離れていて、屋根や玄関先に雪が残っていた。


(冬場は大変じゃないかな…)


俊彦の父親はもう六十四歳だから、私は少し気がかりだった。


「「いらっしゃい!蝶子ちゃん!」」


二人は、『おい、俺は?』という俊彦を無視して私を招き入れた。


「やっとこの馬鹿が片付いて嬉しいよ」


「しかも、相手が蝶子ちゃんだし」


そして、二人は自分達の事は気にしなくていいからと何度も言った。


「あ、あのでも…来年からはお盆やお正月位は、来て、下さいね」


それでも私は、控えめに言ってみた。

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