《MUMEI》

聖龍ボールから始まる。


「ポスト中入った!!」


「オッケー!!」


ポストは…


ディフェンスの中に身を置く少し特殊なポジションだ。


攻撃側の中では一番ゴールに近く、その為ポストにボールが渡れば得点に繋がる可能性が高い。


「ポスト右行った!!」


ディフェンスもポストには神経を使う。


正面にいる自分のマークマンばかりに気を取られていると、ポストに裏をかかれる。


ハンドボールは7対7で行うスポーツだ。


どのポジションもそれぞれ重要な役割を持っている。


その中でも、このポストというポジションが、ハンドボールの面白さをより引き立てているのかもしれない。


「45だ!!打たせんな!!」


二ノ宮にシュートを打たせない為、素早く前に出るディフェンス。


(そう。)


シュートを打てない二ノ宮。


(まだ早いんだ。)


仕方なくボールを桜井に戻す。


1対1のフェイントから、もう一度二ノ宮を見る。


離れられないディフェンス。


一度ペースダウン。


すかさず、空いたスペースへ走る阿久津。


桜井は見ていなかった。


いや、見る必要などなかった。


必ず阿久津がそこに走るだろうと思っていたから。


最小限のモーションから阿久津へパス。


得点を決める。


「最高〜の形だ!!」


喜びを表す桜井。


しかし、言葉に出さなかったが、一番喜び、興奮していたのは、


やはり阿久津だった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫