《MUMEI》 改めて挨拶「今年はこのメンバーかぁ…」 待ち合わせ場所に現れた孝太と麗子さんを見て、俊彦はしみじみと言った。 「今年は東京駅までだけどな」 孝太の言う通り、そこからは別行動だった。 (付き添い必要無いもんね) 麗子さんは既に、お盆の時点で『孝ちゃんの彼女』として、孝太の両親に認められていた。 「お前らは、まだ結婚しないの?」 新幹線の指定席に座った途端、俊彦が二人に質問した。 「まだ付き合って一年経って無いからね」 「経ったら、…いいのか?」 麗子さんの言葉に、孝太は身を乗り出して質問した。 「座りなさい」 麗子さんが言うと、孝太はシュンとした様子で座った。 「すっかり飼い慣らされてんなあ」 「失礼よ」 言いながらも、実は私も俊彦と同じ気持ちだった。 「私の指輪のサイズはわかるわね?」 麗子さんの質問に、孝太は頷いた。 「春までに私の左手の薬指にふさわしい指輪、探してきなさい。 …はめてあげるから」 一瞬、間が空いて… ようやく言葉の意味を理解した孝太が嬉しそうに頷いた。 「ちゃんと、気の利いたセリフを付けてね」 「努力する」 前へ |次へ |
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