《MUMEI》

(麗子さん、かっこいいなぁ…)


私は少し強気な麗子さんが羨ましくなった。


「蝶子だって、日本酒飲めば麗子並の女王様になれるじゃん」


「それはやだって…何でわかるの?」


考えを俊彦に読まれて、私は慌てた。


「だってうっとりして麗子見てたし…
駄目だよ、うっとりは俺だけにしないと…
…って何だよ孝太!」


ふと見ると、俊彦を熱い眼差しで見つめる孝太がいた。


「あれは参考にしなくていいから」


「…そうか」


麗子さんに言われ、孝太は俊彦から目をそらした。


(確かに…)


俊彦並に甘い言葉をスラスラと言う孝太は、既に孝太では無いような気がした。

「それに私も蝶子みたいにしたくても、できないから」


「え?」


「人それぞれ、タイプがあるって事。
あ、そろそろだよ」


俊彦がそう言うと同時に、車内アナウンスが流れた。

「じゃあ、よいお年を」×4


そして、私は俊彦と一緒に千葉の実家に向かった。

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