《MUMEI》 わかっていたけど…伊東家を訪れた俊彦は、意気揚々と結婚報告をした。 「う、うぅ…う〜」 「太郎さん…」 「パパ、どうしたの〜?」 「と、父さん、泣かないで、ね?」 「そうですよ、お義父さん」 俊彦の一言に、父は一瞬顔を上げたが… 「うわ〜ん!」 再び子供のように泣き叫んだ。 (確か、工藤家に行く時も、こんな感じだったような気がするけど…) 今回は、更に凄まじいような気がした。 「全く。わかってたんでしょう? それに、今朝まではちゃんと準備してたじゃない」 「「準備?」」 華江さんの言葉に、私と俊彦は首を傾げた。 「友和。机の上の封筒持ってきて」 「は〜い!」 友君は言われた通り、A4サイズの白い封筒を持ってきた。 「蝶子ちゃんに渡して」 「は〜い!」 「あ、ありがとう」 私は受け取った封筒の中身を取り出した。 俊彦も、私の手元を覗き込む。 「「これ…」」 それは、あるリゾートホテルの、ホテルウェディングに関する資料だった。 しかも、場所は、商店街からローカル線で三十分程の位置にあった。 「こんなとこ、聞いた事無いぞ」 前へ |次へ |
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