《MUMEI》

「ちょっと待った!」×3

「わ!」


(びっくりした)


靴を履いて裏口から出ようとすると、雅彦・和馬・孝太の三人が店内から事務所へ駆け込んできた。


「な、何だよ、皆」


「それはこっちのセリフだ。全く、もっともらしい理由つけやがって」


新婚旅行先のグアムで真っ黒に焼いてきた和馬が呆れたように言った。


「今のは建前だな」


孝太の言葉に、俊彦が固まる。


「本音は違うんだよ、蝶子ちゃん。座って」


(一体何なの?)


雅彦に促され、再びスリッパに履き替えた私は、俊彦の向かい側に座った。


「俺は、元々パンだから、関係無いけどさ」


そう言って和馬は雅彦に説明を求めた。


「実際、休憩時間になってもすぐに弁当食べれない時もあるし、温度の問題じゃないんだ」


「昔から勤務中に公私混同してる奴に、『プライベートで仕事持ち込むな』なんて言われたくないしな」


珍しく口数の多い孝太が、俊彦を睨んだ。


「じゃあ、どうして?」


「昼間も会いたいからだよ」×4


四人が口を揃えた。


「…配達なら、こまめに会えるだろ?」


「それが、本音?」


私が確認すると、俊彦が小さく頷いた

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