《MUMEI》

「だって、蝶子は夜も仕事あるからって『クローバー』で夕飯食べるし…」


(う…)


「で、でも、俊彦、仕事終わったら『クローバー』来て夕飯食べるでしょう?」

「だって、『客として』だし…」


(うう…)


私は言葉に詰まった。


「蝶子ちゃん、配達やめたい?」


「まぁ、できれば」


和馬に質問され、私は頷いた。


正直、面倒だった。


「蝶子は俺に会いたくないんだ〜」


「違…」


(毎日一緒に生活してるじゃない…)


すねる俊彦に、どう声をかけていいかわからなかった。


すると、孝太がメモを私に見せた。


(? また『読め』って事? え〜と)


「配達無い方が、体も楽だし」


(どういう意味だろう?)


言いながら私は首を傾げた。


「…本当に?」


俊彦の目が輝いていた。


(まぁ、嘘じゃ無いし)


私は頷いた。


「だったら、いいよ」


「へ?」


俊彦があっさり意見を変えたから、私は拍子抜けした。


(まぁ、いいか)


私は『クローバー』に戻った。


配達が無くなるのは、咲子さんも嬉しそうだった。


私が自分が発した言葉の意味を知るのはその夜からだった。

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