《MUMEI》
有理さんの彼女
披露宴の最中から、商店街の皆にはある疑問があった。


それは、有理さんの隣の席が空席だった事だ。


「ねぇ、彼女は?」


質問したのは、披露宴が終わり、見送りをしている愛理さんだった。


「え、と…」


「もうじき卒業だし、そろそろ皆に言ってもいいんじゃないか?」


迷う有理さんの隣で、俊彦が話しかけた。


「俊彦、知ってるの?」


私が驚くと、俊彦は頷き、『それ作ってる時に会った』と、私がはめているビーズのブレスレットを指差した。


(有理さんに教わったんだ…)


いくら俊彦が器用だといっても、素人にしては出来すぎのブレスレットを見つめて私は納得した。


「いや、披露宴はちょっと…」


そう言って、有理さんは、何故か相田さんの出席者達を見つめた。


?


その言葉の意味を知るのは…


『クローバー』で二次会を始めた直後だった。


「彼女…です」


有理さんが紹介した彼女は、制服姿だった。


そのよく知っている制服に、会場からざわめきが起こった。


「な、成瀬(なるせ)?」


相田さんが目を丸くして、私達が知らない有理さんの彼女の名字を口にした。


(それで、言えなかったんだ)

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