《MUMEI》

「ナイスパス!!」


「当然っしょ。」


桜井が上手いからかな。


こういう時の声援はいつも桜井に集まる。


「栄二。」


「ん?」


「あのタイミングで来てくれると助かるわ!!」


「あ…、うん。」


桜井が俺を誉めてくれた。


あんなに遠い存在に感じていた桜井が。


「…」


阿久津を認める桜井を皆は意外そうに見ていた。


二ノ宮を除いて。


桜井は、自分勝手なプレーをしていて、全員を見下しているように思われ勝ちだが、


実力のある奴は認めている。


二ノ宮はそれを知っていた。


誰よりも勝ちに拘る桜井だからこそ、キツい言葉で指摘するのだ。


「ナイッシュー!!」


点を返される聖龍。


「リスタート!!」


そう言って最初に飛び出したのは、


阿久津だった。

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