《MUMEI》

◆◇◆

「狐‥叉‥?」

 夜桜に抱かれたまま、狐叉は、ゆらり、ゆらり、と尾だけを動かす。

 毛並みの白が月明りに映え、眩しい位に輝いて見える。

「‥‥狐叉、行こう」

「‥‥‥‥?」

「大丈夫だから、私は‥」

「‥‥‥‥‥‥‥」

 狐叉は耳を垂れ、黙っているしかない。

 夜桜は狐叉を抱え立ち上がると、鬼門へ向かい歩き出す。

◆◇◆

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