《MUMEI》

放課後。


部活だ。


「お〜っす!!」


「お〜っす!!」


「クロさん来る前に準備しとくぞ。」


「おう。」


部室には全員集まっていた。


春休み、クロさんがコーチになった時、初めは戸惑った。


でも、クロさんがマジに俺たちに指導してくれることで、意識が変わった。


俺たちはクロさんが来るまでの間に、テーピングを巻く、両面テープを巻く、ゴールを出すといった、指示がなくとも、あたり前のことをやるようにしていた。


クロさんは練習始まる前ぐだぐだしてるのが赤高の伝統だと言っていた。


クロさんたちの代は強かったけど、練習が始まるまで確かにぐだぐだしてた。


俺たちもそんな伝統を受け継いでいたけど、


この伝統は、俺たちの代で終わりだ。


「おっす〜!!」


クロさんが来た。


「ちわ〜っす!!」


春休みの頃と違い、体育館の使用がバスケ部やバレー部との半分になった。


曜日によってはオールコートで使えるんだけど、とりあえず今日はハーフコート。


「ねぇねぇ?」


「ん〜?」


「ハンド部の方見て。」


「え?」


「あの人見たことない?」


「あ!!クロさんでしょ!?知ってる〜!!」


「だよね!?何してるんだろ〜?」


「…」


隣の女子バレー部がクロさんを見て騒いでる。


人気だったからな。


クロさん。

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