《MUMEI》

「あー!お前はヒジキ!」

引越しして籠から出した瞬間、逃げ出した恩知らずの微妙に飼っていた猫!

「その猫……」

「あー、さっき話した公園で拾った、帰巣本能なのか逃げたのにすぐ帰って来やがって。前は愛想良い子猫だったのにな……。」

ヒジキは拾ったときの触り心地がヒジキっぽいから名付けた。

「……俺、コイツ知ってる」

乙矢はひどく驚いていた。

「って、……泣く程?!」

しかも、泣いていた。

「ははは……なんだ、生きてたのかお前。」

嬉しそうに抱き上げる。

「ヒジキはいいから、荷物を持て!」

ひ弱な俺に重い荷物を持たせるな。

「ヒジキなんて名前が嫌で逃げたんだよな?」

凄い、ヒジキが喉を鳴らして懐いているのなんて。
いっつも触れようとするだけで引っ掻かれてたのは嘘みたいだ。

「じゃあ、何か他に付けてみろよ。」

当時は本当にヒジキみたいだったんだ。

乙矢はヒジキ(仮)をまじまじと見つめる。

「………じろ…… ……アルマジロ 」

「別の動物じゃないか。」

思わずツッコミしてしまう。
結局、アルマジロからアルになった。
元ヒジキにしては高級過ぎやしないか?

「大出世だなお前。」

アルに触ったらやっぱり引っ掻かれた。

……猫にもモテるのか乙矢。

「嫌われる臭いしてるんじゃないか?」

「うるせ……」

薄々感ずいてたが指摘されると傷付く。

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