《MUMEI》

「―――♪♪♪♪♪♪」




音楽の鳴りだした携帯をケツポケットから抜き取り潮崎は開いた。



「――――うん…」



俺に背中を向けたまま幾らか頷いた後直ぐに携帯を閉じた。




そしてはぁと溜め息をつくと潮崎は俺の方を向いた。




「あの、これからホテル戻られます?」



睨みつけていた表情とは一変し、今まで何もなかった様な態度。



潮崎は靴を脱ぎ、部屋に入ってきた。




「…いや…ここに泊まるつもりだけど…」

「――そうですか、
あの俺直ぐに帰るんで戸締まり宜しくお願いします」



そう言いながら俺が食べた皿をキッチンに運びそれを洗いだした。



「イイよ、俺が洗うから」



「そうですか?じゃあ朝はそうして下さい」



サッと洗い終えると今度はバスタオルや衣類を籠から洗濯機に放り込みだした。




ガコガコとそれが回る間にクローゼットを開け、バッグに服を次々と詰め込んでいく。


「なにしてんだ」




「――惇預かります」


「は?」




「俺のマンションで預かります」



―――……




潮崎はギュッとファスナーを締めパンパンのバッグを肩に担ぐ。



そして壁際にあるノートパソコンのコンセントを外し、無造作に脇腹に抱えた。



「預かるも何も惇は男と消えたんだぞ?
――本当に抱き合ってたんだし…」




二階のこの部屋のベランダからはっきりと見えた。




惇よりも背の高い…



確か最近CMで良くみかけるハーフの男だった。



「――貴方の弟は…、上京して、頑張っている合間に、抱き合える位信頼できるダチが出来たんです。
――どうやら貴方には抱き合える位心を許しあえる友人が居ないみたいですね」



「!なっ!!オマエ!」




「――帰りの際戸締まり宜しくお願いします。
鍵は一階の101に預けて下さい、そこ管理人さんのお宅なんで…」



潮崎はポケットからキーチェンを出し、鍵を外してパソコンの置いてあった机に置いた。

そして全く振り返る事もなく玄関に突き進む。

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