《MUMEI》
卒業
「お前…何してる」


「何だ、忍(しのぶ)か。

正当防衛だ。今日で卒業だし、問題無いだろ?」


俺ー田中 祐也(たなか ゆうや)の目の前には、五人の男達が倒れていた。


「言っとくけど、こうなった原因は、俺じゃない。

俺はお前ほど目立つ存在じゃないし」


身長は標準な俺と違って、大柄なこの男ー藤堂(とうどう)忍はどう変装しようとも目立つ。


今日は、俺の中学の卒業式で、忍は『親戚』として出席する予定だったから、黒いスーツに身を包んだ忍は…


「今日はまるでヤクザかホストだな、忍」


「それよりは、品があるつもりだ。

それにしても、こいつら、高校生か?」


俺の皮肉を軽く受け流して、忍はいつもの冷めた口調で質問した。


「あぁ。可愛い妹達に頼まれたらしいぞ」


その可愛い妹達は、俺の同級生で、俺を、裏庭にいたこの頼れる兄達に引き渡し、今は体育館で行われる卒業式に出ている。


「妹達の進路は?」


「女子校」


「なら、いい。帰るぞ」


「はいはい」


忍にはすぐにわかった。


俺が倒した男達の制服が、俺の行く高校の物では無い事に。


それだけ確認すれば十分だった。

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