《MUMEI》 原因「祐也」 部屋に戻ると、忍が口を開いた。 「何だよ」 「さっきの原因は、お前のメールにいつもある男か?」 俺は、忍に、毎日報告メールを送っていた。 俺は、それをしなければならなかった。 「それ以外にいるかよ。大体お前が中途半端な時期に俺を転校させるから、悪いんだぞ」 俺は忍を睨みつけた。 俺があの中学校で生活していたのは三ヶ月だけだった。 三年の三学期は、皆受験モードでピリピリしていて、転校生の面倒を誰もみなかった。 …難関進学校合格確実の『元生徒会長様』以外は。 こいつが、とにかく目立つ奴だった。 顔も、頭も、体も、性格も良くて その上、両親の肩書きまでご立派で だから、過激なファンもいる。 今日俺を呼び出したのも、そんなファンのごく一部だった。 「…もういいだろ。あいつはエリート校で、俺は普通の高校なんだから」 「まぁ、そうだが…気をつけろよ」 (あいつ以上に厄介な奴なんているかよ) この引越しも、しょっちゅう俺のアパートに遊びに来るあいつから逃げる為のものだった。 「俺は入学式には行けないからな」 「はいはい」 前へ |次へ |
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