《MUMEI》
有理ノヤキモチ
「流理、どうだった?認めてもらえたか?」

「ううん……教育委員会で話し合うって。それからオレの扱いを決めるらしい。それまではみんなには言わないことになってる」

「……そっか。待ち遠しいな」

「うん」

もし受け入れられなかったらどうしようって言う不安がある。

でもなんとなくだけど大丈夫な気がする。

「早苗さん遅いね」

「あぁ。ちょっと仕事が長引いてるから遅れるんだって」

「そうなの?」

「……つか流理、お前いつから早苗のこと名前で呼ぶようになったんだ?」

オレは意外な質問に有理の顔を見た。

「……ヤキモチ?」

「な……ッちげーよ!」

「素直じゃないなぁ。正直にそう言えよ。顔赤くして全然説得力ない」

有理は悔しそうにう―っとうなった。

「別に大した理由ねぇよ。弟の彼女だし、いつまでも名字で呼ぶの変かなと思って。早苗さんの方からもそう言われたし、なんとなく流れでそうなっただけだよ。何心配してんの?」

「いや……別に」

「お前、オレにだって環さんがいること忘れんなよ?」

「わ、わかってるけど同じ顔してるから気になるんだよ!」

「大丈夫だって。んな気の迷いなんか起こさないって」

有理は不服そうにしていたが、渋々うなずいた。

「お前さ、オレとか早苗さんを信じなかったら誰を信じるんだよ?」

「流理は心広いよな。それに比べてオレ狭いよ……。ゴメン」

オレは有理を抱きしめてあげた。

「な…何してんだよ!気持ち悪いな」

「何照れてんだよ。兄弟だろ?たまにはいいじゃんか。スキンシップって意外に大切なんだぜ」

「そういう問題かっ!」

「……お前さ、脚のこと気にしてんだろ?それ以外はオレと対等だけど歩けないことが自分の……なんて言うか格を下げてるっつうかさ」

有理が急におとなしくなった。

「でも有理は有理じゃん。歩けないことも個性」

「有理――!遅れてゴメ……」

合鍵で入ってきた早苗さんは固まってしまった。

「あ、早苗さん。いらっしゃい」

「流理!離せよ!!」

「早苗さん、早くこのワガママな弟を連れてって!」

「あ……ハイ。何してたんですか?」

「家族愛を確かめてたんだよ」

「違う!」

「まぁ有理があんまり言うこと聞かないからおしおきしてたのもあるけど」

「早苗!!早く行くぞ!」

ふたりはこれからリハビリに行く。デート兼リハビリみたいな。

リハビリは早苗さんとふたりで分担して連れて行くことになっている。

リハビリしないと身体の筋肉や筋が怠け、いつか寝たきりになってしまう。

ふたりの将来のためには必要な準備のひとつだ。

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