《MUMEI》

「クロさん、今日は?」


(フォーメーションの練習したいけど…、試合で試すこともできない今新しい攻撃パターンを教えてもな…)


「ボール鬼からで!!」


だったら機動力に拘ってもいいかな。


「じゃあじゃんけんじゃんけん!!」


盛り上がる選手たち。


恒例となったこの練習も、選手たちの楽しみの1つだ。


「ガラッ…」


体育館のドアが開く。


安本だ。


「あ、ども。」


「気にしないで練習続けてください。」


(また、ふざけた練習を…)


こんな練習に付き合うくらいなら早く帰りたいもんだ…


四角パス。


キーパー練。


3対3。


ポジションシュート。


クロはひたすら攻撃に特化した練習を行う。


守りは村木に任せるつもりだ。


そして、素人の多い赤高。


そんな選手たちにハンドボールの楽しさを伝えるのに一番有効だと考えたのが、


点を取ること。


であったからだ。


「お疲れした〜!!」


「おうお疲れ〜。」


練習後、校舎外でタバコを吸うクロ。


選手たちはそんなクロを置いてさっさと帰る。


「…」


安本が来た。


何も言わずクロを見た。


クロは安本が何を考えているのか、なんとなくわかった。


(未成年のくせに…、どうしようもないやつだな…。)


あまり面識のない大人にそう思われるのは、慣れていた。


タバコの火を消すクロ。


「さて!!頑張ってくるか!!」


そう言って、車に乗り込むと、赤高を後にした。

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