《MUMEI》

「七生の言えない隠し事に神部が関わっているのも気付いてるんだ。
コソコソ俺が見てない間に親密になっているのも気に入らない……俺の会う時より楽しそうに話しして…………」

口に出して、思い知らされた。
喧嘩というより、ただの文句だ。

「それで?俺を怒らせたいんだろ?」

七生にとってはなんでもないことだ。

「…………ばーか……」

すぐ、七生に言えた悪口がこれだ。

「俺のこと好きって言ってるようにしか聞こえねー」

その余裕がムカツク。

「自惚れんな、嫌いだよ、俺のことを苛々させて大嫌いだ。
七生だってそうだ、いつまで経ってもヤらせないから嫌気がさして神部と寝たんだろ?!」

「二郎は安西と寝たのか?俺がそんなことをしてたら二郎はどう?」

「何故そうなる!今は俺が聞いたんだ!」

七生に向かってを指したら、無意識に秘技、腹筋突きをしてしまう。
野球やっていただけあって七生の動態視力は凄い。突く前に指を掴まれた。

「言うまでは……待っててよ。」

俺は七生が不安になっていないのが不思議だった。
七生は俺を好きなのに、身体の結び付きは無い。

「俺のこと、嫌いにならないの?」

期待に応えられない俺のこと……。

「好き過ぎだ。」

七生は照れるようなそぶりは見せない。

「俺は……違うかもよ?昨日、キスしたんだ。」

「誰と?」

掴まれた指がより、強く握られた。

「……罰を頂戴。」

誰かは答えられない。

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