《MUMEI》
騒音
夕方からふて寝したせいか、夜、一度目が覚めてしまった。


暗い室内でぼんやりしている俺の耳に、左右の部屋からの音が聞こえてきた。


(どっちも結構聞こえるな…)


俺の部屋が静かな分、左右の雑音が大きく感じた。


左隣の大学生は、友達を呼んで飲み会をしているらしい。


挨拶の時はボソボソと暗い声だったのに、別人のような明るい大声を発していた。


それに応える複数の男達の笑い声も、かなり、大きい。


(つーか、右隣ってもしかして二人暮らしか?)


会話の内容が、…恋人同士のような感じがした。


しかも、すぐに、明らかにヤッてる最中の音がリアルに響いてきていた。


「ちょっ!…隣に聞こえたらっ…どうすんだよ!」


やや高い声の男は、一応、常識があるようだ。


「大丈夫だよ。右隣、引越したし、左はいないから」

(あぁ、そう言えば、挨拶まだだったっけ…)


それに、俺はまだ入口に『田中』の表札を出していなかったから、嬉しそうな低めの男がそう誤解しても、仕方なかった。


(まぁ、…いいか)


俺は、トイレに行ってから、また布団に潜った。


そして、騒音の中、目を閉じ、朝までグッスリ眠った。

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