《MUMEI》
右隣の住人
翌朝、ゴミを出しに行く為に玄関を開けた途端、右隣の玄関も開いた。


「おはようございます」


「あ、…おはよう。君、は?」


俺が挨拶すると、明らかに男は動揺していた。


(まぁ、仕方ないよな…)


男は、隣はいないからと調子にのってヤッていた低い声の方だった。


「あの、俺、昨日引っ越してきた田中って言います。
すみません、昨日、挨拶行ったんですけど…留守だったんで」


「昨日?」


俺が頷くと、男はますますしまったという顔をした。

(つーか、こいつ、…美形、だな)


困った仕草すら、妙にキマっていた。


年は、明らかに俺より上。

…忍より上かもしれない。

身長も高いし、大人の男って感じだった。


(できればあんまり関わりたくないな…)


「俺、昨日は疲れて熟睡しちゃったんで。

後で菓子折持って改めて挨拶に行きます。

じゃあ、お先に」


俺は軽く頭を下げて、男の横を通り過ぎた。


その時、チラッと右隣の表札を確認した。


(『屋代(やしろ)』…か)


当然、アパートのゴミ置き場は一つしかないから、ゴミを捨てた帰りに、俺はまた屋代さんと会ってしまった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫