《MUMEI》 乙矢帰宅「ただいまー」 是清は誰もいない玄関に言う。広い部屋によく響く。 アルが誰よりも先に入る。 「言わないと入れさせません。」 通せん坊された。 「……ただいま」 「はいはいどうぞー」 更に加えて物凄い笑顔で歓待された。 足元にアルが擦り寄っている。 アルの潤んだ瞳は二郎に似ている。 気休めでも二郎を傍に起きたかったのだ。 公園で拾えなかった時は死んだんじゃないかと思っていた。 まさか、また会えるなんて思わなかった。 「ヒジ……アルのこと公園で知っていた?」 「そうだな。」 「飼いたい?」 是清は勘が冴えている。 「要らない」 だって、本物ではないから。 「まあ、やらないけどね。俺のだから。 欲しいものは手放さない主義だから。」 是清らしいと思った。 前へ |次へ |
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