《MUMEI》 普通じゃない関係俺の態度に安心した屋代さんは気さくに話しかけてきた。 俺も、それに対し、普通の対応をした。 「じゃあ、朝飯食べたら、菓子折持って行きますから」 「何度も悪いね」 「いえ」 俺と屋代さんは、それぞれのドアを開け、部屋に入った。 (冗談じゃないぞ…) 俺は、右隣の住人と、昨日一緒にいた男の普通じゃない関係に、驚いていた。 まず、うっかり忘れていたが、男同士でヤッてるあたりで普通じゃない。 だから、屋代さんが昨日泊まった男を親友と俺に説明するのは理解できた。 問題は、相手の男だ。 (常識あると思ったのにな〜) 声を抑えようと必死な感じがしたし。 相手の男の名前は、慎(しん)。 既婚者で、子持ち。 それだけでも驚きなのに (よりによって、先輩かよ) 慎…さんの子供は、俺が来月から通う高校に通っているらしい。 その上、珍しい男女の双子。 (関わりたくないな…) 心底そう思った。 そして、俺は冷蔵庫の中からゼリータイプの栄養補助食品を取り出して、一気に飲んだ。 それから、歯を磨いて菓子折を持ち、重い気持ちで隣に向かった。 前へ |次へ |
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