《MUMEI》
仲村(なかむら)さん
(わ、若っ…!)


屋代さんの恋人の慎さんこと、仲村さんの第一印象は、とにかくその一言だった。


「やっぱ驚くよな〜、これで高校生二人の父親って、信じられないだろ?」


屋代さんの言葉に俺は頷いた。


屋代さんに呼ばれ、玄関先まで来た仲村さんは


華奢で女顔で…


童顔だった。


屋代さんと同い年にはとても見えなかった。


(つーか、いくつなんだ?この二人…)


仲村さんの子供が今年高二って事は、二十歳の時の子供だとしても、二人は三十七歳になる。


そう言われても、若い。


「もう四十過ぎのおじさんだよ。十代の君に比べたら…」


「マジかよ!?」


(しまった)


驚きのあまり、敬語が抜けた。


…屋代さんに爆笑された。

「すみません。本当に?」

「「うん」」


(マジかよ…)


俺はまだ信じられなかった。


「ところで、田中君。うちの子達と同じ高校なんだって?」


「あ、はい」


「実はね、あそこは俺と祐希(ゆうき)の母校でもあるんだ。
こんな偶然てあるんだなあ」


祐希は屋代さんの名前だった。


「…そうですね」


笑顔の仲村さんには悪いが、俺は全く嬉しくなかった。

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