《MUMEI》 普通は嬉しい俺の名前が祐也で、屋代さんの名前と一文字違いだと知ると、仲村さんのテンションが更に上がった。 (何か、気に入られてるような…?) 「あの、俺、そろそろ戻ります。 荷物、片付けちゃいたいんで」 とにかく関わりたくない俺は、早々に退散しようとした。 「お茶でも飲んでけば?」 嫌な予感が的中した。 「何だ?もしかして、田中君気に入ったのか?」 「だってさ〜、いかにも普通な感じがいいじゃん」 (普通? 俺が?) 驚いて何も言えないでいると、何故か屋代さんが仲村さんを睨んだ。 「こら、失礼だぞ、慎。いくらお前が普段普通じゃない連中に囲まれてるからって!」 「悪い、田中君。別に、悪い意味で言ったわけじゃないんだ」 「別にいいですけど…」 俺にとっても普通は悪い意味では無かった。 (この人にとって、俺は普通なんだ…) 俺は、にやける顔を隠す為にうつ向いた。 「ほら、傷付いてるだろ」 屋代さんに誤解された。 「ごめん、田中君」 「いいですよ」 そして、気をよくした俺は、屋代さんの部屋で三人で茶を飲んでから、自分の部屋に戻った。 前へ |次へ |
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