《MUMEI》
秋から冬に
短い夏が、うるさい、夕立のように、すぎてしまった。
夏と秋の境には、碧く育ち過ぎた、すすきの川。  夏海の背丈ほどのすすきを棒で ワッサワッサ 横に叩いてやると、いっせいに、バッタ類が飛び立つ。 静かに潜んでられたのに、飛び立つバッタ類は、一振りの 網に沢山かかる。 「こんなことして、何が楽しいの? 沢山、網にかかるのは、おもしろいけど」夏海の虫好きに、つきあわされ、網を振り回す、由佳と千明。 
おもしろいほどの、網にかかるのを、喜んでいる。 捕っては、逃がし、捕っては逃がし。
緑のバッタ類の中に、赤い殿様バッタ発見。 多分、「殿様だと思う。」   見たことないから、殿様でいいやって、逃がしてしまう。もしかしたら、新種だったのかも知れないが。 「運動会だね、走るの遅いから休みたいな。練習もきついし、組体操の逆立ち、出来ないから、放課後練習だよ」 
運動会間近で、運動嫌いな由佳がバッタを眺めながら、つぶやく。夏海と千明はそこそこ、運動会を楽しむ予定なので、由佳の気持ちは察する事しかできない。
碧いすすきも、所々、白い穂が顔出しはじめていた。もう、秋にしっかり色付き始めていた。
三人はこれからの秋の行事、運動会の先にある、必ず来るクリスマスと正月とお年玉を浮かべながら、それぞれ帰宅した。
「クリスチャンじゃないのになぁ……」
なんて、思いながら。

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