《MUMEI》

ここは化学室のような不気味な場所。ラーテの住処だ。
「国王にやられる私ではないわ…」

ラーテはどうやら考え事をしているらしい。
「今にみてろ…」
持っていたビーカーが音を立てて割れた。


一方、滝、俺はというと

「ん…はっ」
悪夢にうなされていた…
「だ…め…このままじゃ…世界は…」
次の瞬間、俺は大声を張り上げた。
「破滅する!!」

隣で寝ていた智嬉が目覚める。きっと俺の声に驚いたんだろう。
「滝!?おい、大丈夫か?」

「あ…」
慌てて智嬉はその場に飛び起きた。
「ハァ…ハァ…智嬉…?」
「汗だくだぞ…」
見ると、俺の手はびっしり濡れて、身体中寝汗で濡れていた。

「夢か…」
「どうした?」
「少し、昔…いや、前世の夢を見た」
「へぇ」
「俺は国王になって、国民を守るべき存在になっていた。だが、 今の自分には、なんの力もない」

智嬉は俺の肩を叩く。
「ハハハ!そりゃあ夢と現実は違うさ!」
「え…」

「だってそうだろ?俺はお前と生まれは同じでも、両親は違う。それと同じさ」
俺は腕捲りをする。
「うーん…まぁな。それぐらい俺だって分かるさ」

「な?俺のように強くなれない奴だって山程いるんだ!だから、マイペースでやっていけ」

智嬉の言葉に、俺は勇気をもらったような感じがした。

「滝…大丈夫だよ」
「おう」

理恵華の言葉を思い出した。
“ラーテはきっとあなたを殺しにくる”

「智嬉…俺、ちょっと外に行ってみるわ」
「え!?寝ないでいいのか!」
「うん」
俺は白いジャケットを羽織り、携帯用の棍棒を用意して表へ出た。

(無茶するぜ…)

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