《MUMEI》

「お待たせしましたビールで〜す。」


全員に飲み物が行き渡る。


乾杯の挨拶とか短めに頼むぞ。


「あれ?」


いざ乾杯という時に、伊達先生が声を上げた。


「黒田!!」


え?


黒田?


「あれ〜?何してんすか先生たち?」


「歓迎会だ。お前こそ何してんだ?」


「見てわかんないんすか?バイトっすよ!!バイト!!」


ちょっと待て?


さっきまで練習に来てたお前がバイトだと?


「いや、この前まで派遣やってたんすけど?夜の方が都合いいんで居酒屋でやることにしたんすよ。」


「大変だな〜。お前さっきまで練習来てたじゃね〜か。」


「ま、そうなんすけどね。やっぱ金いるし。」


こいつ学生だよな?


学校行って、練習来て、そしてバイト?


そんな生活で大丈夫なのか?


「じゃあ自分行かなきゃなんないんで!!」


「おう!!頑張れよ!!」


「伊達先生?」


「なんですか?」


「彼…、黒田くんは学生ですよね?」


「そうですよ〜。確かこの近くの専門学校行ってるはずです。」


「専門学校…」


やっぱりな、部活ばっかりやってたから大学に行けなかったんだ。


要するに負け組だ。


「あいつは成績も良くて、私としては大学を勧めたんですがね?行きたくないってずっと言ってましたよ。」


…黒田小太郎。


なんなんだ彼は?

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