《MUMEI》

私は…
ももたとサキさんが気になって仕方なかったけど、
どうすることも、
…………出来なかった。
仕方なく、ももたに言われるがまま“町内会の会議”に参加するしかなかった。




『…百瀬さん?
…ちょっと聞いてますか?百瀬さん?』




『あ…すいません。
…何の話でしたっけ?』




『困りますねぇ(笑)
今年の祭りも例年通り
“3月3日”開催です。
祭りの開始と同時に甘酒を先着50人に配って…
お子さまには、ひなあられを渡します。
分かりましたね!?』




『…はい。
祭りって“雛祭り”だったんですね…?』




『もちろんです。
これでも一応、古い歴史があるんですよ(笑)』




『はぁ…。そうですか。』




“雛祭りの祭り…。”
この町内、かなり変わってるなぁ…。
ももた…“屋台出す!”って張り切ってたけど、知ってんのかなぁ…。




来週は、去年の反省会と改善案を話し合うってことで、今日の会議は早めに終わった…。




私は、そのまま真っ直ぐ家に帰る気にはなれず、近くの居酒屋で時間を潰すことにした。




25歳にもなると、1人で居酒屋とか平気になるんだよね…。




誰に気兼ねをするでもなく、ビールに枝豆…にんにくの丸揚げと…まさに“オッサン状態”で飲み潰れた。




『私はぁ〜、サイテー野郎なんだぁ〜!百瀬咲良ぁ〜!しっかりしろぉ〜ばかやろぉ〜!!』




足元もおぼつかず、叫びながら、マンションの前に着いた…。




午前0時…。




ももたの部屋の灯りは、点いていた…。




“…サキさんと、まだ話し合ってるのかなぁ。”




私は、音を立てないように気を付けながらゆっくりと、ももたの部屋の前を通り、自分の部屋へ向かう…。




ゴンッ!ガッチャン!




『痛〜いっっ!!』




私は、飲み過ぎてた…。
真っ直ぐ歩くことが出来ず、設置してあった消火器にぶつかってしまった…。




“ヤバッ…。”




『誰や!?…咲良か?』




大きな物音に驚いて、ももたが出てきた…。




『…ゴメン。…ちょっと転んじゃって…。』




『大丈夫か!?
…ってお前。酒臭っ!!
俺ら、咲良帰ってくるん待ってたんやで!
町会長さんらと飲んできたんか!?』




『…違うよ。…1人で飲んでたんだもん……。』




『…なんでやねんっ?
なんで女が1人で、そこまで飲むねんっ!?』




『…だって………。
…それより“私の帰りを待ってた”って?
…なんで?何の用!?』




『あぁ〜。
夜遅なってしもたから、今日、咲良んちにサキを泊めてもらわれへんかな…と思て……。』




『サキさんを家に!?』


『おぉ…頼めるか?』


『…別にいいけど。
ももたの家はダメなの?』


『アカンッ!!』


『何で?』


『何でもやっ!!』



『あっそう……。』




半ギレのももたに圧倒されていると、部屋の奥からサキさんが出てきた…。




『咲良さん…。
私、この辺の地理も分からへんし…知り合いもおらへんもんで、悪いけど今日だけ泊めてくれる?』




サキさんは、とても申し訳なさそうに言った。




『…もちろんです。
あんな部屋で良ければ。』




『よっしゃ!決定。
ほなっ。咲良すまんけど、サキを頼んだで!
…あと。一つ忠告や!
咲良!お前もだいぶ酔うてるんやし、いらん話せんとチャッチャと寝ぇ〜や!!分かったな!?』




『…はいはい。
行こう。サキさん!』

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