《MUMEI》

「安本先生、ハンド部はどうですか?」


「え?、そうですね…」


どうって…


「黒田は教えるの上手いんじゃないですか?あいつ自身まだ現役の選手で頑張ってるし。」


「現役?」


「そうですよ。社会人リーグっていう形で今もハンドボール続けてるんですよ。」


「そうなんですか…。」


現役の選手?


ハンドボールが好きならやっていても不思議じゃない。


だけど…


なら何故コーチなんかやってる?


自分のチームに専念すればいいじゃないか?


どうして…


そこまで頑張れるんだ?


「あいつらの時はうちの学校のハンド部も強くて…、全校生徒で応援に行ったもんです…。私は陸上部顧問ですから、ハンドボールのルールはよくわかりませんでしたが…、感動しましたよ。」


好きだから?


本当にただそれだけの理由で頑張ってるのか?


成績良いならどうして大学に行かなかった?


大卒の方が良いとこに就職出来るし、給料だって良くなる。


それを蹴ってまで専門学校に行き、大学で出来たハンドボールを社会人リーグでやり、さらにその傍らにコーチ?





こんなに…


こんなに自分に正直に生きてるやつがいるのか…。


俺は…


ここまで熱くなれた物があったか?


スポーツが苦手。


俺はそう思っていたけど…


そう決めつけていたのは俺自身だったのか?


そうか…


俺は出来なかったんじゃない。


やろうとしなかったんだ。


「…安本先生?大丈夫ですか?」


「…えぇ、平気です。」


この日…


安本はクロの一部を見て…


恥ずかしさを覚えた。


悔しかったから?


後悔したから?


理由はわからなかったが、


涙が溢れた。

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